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2007年06月10日
「あなたは、なぜここにいるのか」。
人体の不思議展なるものを見た。

昔、ドイツ人だったか、欧州でこの手の新しい保存方法を開発したという話を聞いた。そして、その展示会が物議をかもしたというニュースがあった。
今回の展示も、欧州人なのかと思って見たが、よく観察するとアジア系の献体だった。すべて、生前に献体について合意されていますと表示されていた。しかし、本人は、死後に特殊なプラスチック加工をされて、こういうふうに衆目にさらされることまで了解していたのだろうか。
よく見ると、中国人とある。死刑囚からの臓器移植がたびたび報道されていたこともあり、この表示されている「生存の合意」については、どこまでなされていたのかと気になった。
しかし、そうしたインフォームドコンセントの問題、生命倫理的問題は別にして、これらの献体標本は、大変興味深いものであった。人間の体の構造を知る上では、実にすばらしいものだと思った。医学的科学的には、こうした新しい保存技術を使った人体標本を観察できることは有益なのかもしれない。
ただ、この献体標本は本物の人間である。特殊加工され、様々な動きをつけられた(演出された)人、弓を射る人、走る人、輪切りになった人。最後に、その人たちの「目」を見ると、なんとなく悲しげに見えた。まぶたの様子から、明らかにアジア系とわかった瞬間に、この標本になった人の過去に思いをめぐらせてしまった。
どうして亡くなったのだろうか。どうして献体を許諾したのだろうか。解剖ではなく、標本になることになぜ同意したのだろうか。ボランティアだったのだろうか、それとも残された家族のために何某かの金銭をもらったのだろうか。あるいは、・・・。
フィリピンで臓器売買を合法化しようという動きがあるなか、ふと、献体の人の過去を想像してしまった。
皮をはがれ、筋肉組織と臓器がむき出しになった身元不明のアジア人に、私はそっと話しかけた。
「あなたは、なぜここにいるのか」。
そして、同じことを、自分にも問いかけた。
会場の出口付近で、DVDが売られていた。一瞬、買おうかと思ったが、買わずに会場の外に出た。
外には、さわやかな青空が広がっていた・・・。
投稿者 matsuno : 2007年06月10日 18:43