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2006年07月21日
耐震偽装事件
耐震偽装事件(NNNドキュメント)
耐震偽装事件で逮捕された木村建設の篠塚明・元東京支店長に密着した150日間の記録である。
何よりも、NTVの取材力のすごさに驚いた。NTV社会部の調査報道は、平和相互銀行金屏風事件の取材以来の伝統があるが、今回も被疑者に粘り強くアプローチした結果もたらされたスクープドキュメンタリー。
社会部記者の日常は、朝回り夜回りである。今回も清田大輝記者をはじめとして、記者たちは連日足を運んだのだろう。最後に、その思いが通じて、篠塚元東京支店長は、記者をマンションの部屋に招きいれた。記者の努力のたまものである。
逮捕されるかもしれない人物が、記者を招きいれ、そして独白するということは、そう起きることではない。しかし、記者の真摯な態度と被疑者の心境の変化しだいでは、こういうことは起きる。まさに、人格と人格の微妙なふれ合いみたいなものだ。
記者は、「姉歯元建築士が偽装設計を行った背景には、篠塚元東京支店長からの圧力があったのではないか」、という一点について聞き続けるのだが、元支店長から返ってくる答えはノーである。しかし、そうした否定の言葉をよそに、逮捕のXデーに向かって、元支店長の表情がこわばり、声調も弱くなっていくのがわかる。追い詰められていく人間というのは、こういうものだという現実と悲しさが胸に迫ってきた。
ある意味、この記者の一連の取材で何かが明らかにされるというよりも、事件の渦中の人物がNTVの記者だけに心を許し、そして胸中を独白していくこと、そして日々変わり続ける表情が、視聴者に強烈なインパクトを与えるのである。
篠塚元支店長はさらに、記者の携帯にメールをし、そして、節目で節目でインタビューを取らせた。それは、元支店長の不安がそうさせたのだろうか。いずれにしろ、元支店長と記者の間には、被疑者と取材記者との関係を超えた、不思議な人間同士の細い信頼関係の糸を感じざるをえない。
篠塚元東京支店長が車を運転しながら、うれしそうに記者に語った言葉が印象に残った。
「この近くに、はじめてまともに建築の仕事をした建物があるんですよ」
そのアパートは、今もしっかりと建ち、そこには人々の暮らしがあった。
元支店長も、最初の気持ちをいつまでも持ち続ければ、こうした事件は起きなかったにちがいない。
業績主義、出世偏重、市場原理主義・・・。そうしたものが、人々の倫理観を狂わしてしまうのだろうと思った。
NTV社会部が、さらに良い調査報道をやってくれることを期待したい。
投稿者 matsuno : 2006年07月21日 16:35
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